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ノンポリ

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土居敬生さん
1977年卒/文学部史学科
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2018.2.21
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ノンポリ

私の手元に懐かしい「もの」がある。昭和48年度入学時に配られたガイダンス本である「学生生活」と「学修要項」、年度ごとに配られた「講義概要」(4冊)である。それに、講義ノートが30冊余、もっとも1講義が完結したノートは少ないし、友人の手書きがはさまっているものもある。よくぞとっておいたものである。そんな真面目な学生でもなかったのに。
その「学生生活」に学舎とグラウンドの見取図が附録されている。広げてみると当時の広小路学舎の建物が思い浮かび、胸が熱くなる。
様々な講義が懐かしい存心館、語学の授業を受けた有心館、研究室があった清心館。清心館と研心館の地階には食堂と生協売店があった。その売店で最初に買った本は『二十歳の原点』で、立命大生はまず読まねばならない本であった。また、各講義の参考図書を真面目に買い求めた。高かった。
キャンパスには、学生運動の名残とも言うべき独特の文字が並ぶ看板が立ち、それを背に顔を隠した学生がマイクを持って主義・主張をアジる姿に新鮮さを感じると同時に、政治思想にそれほど関心をもっていなかったことに後ろめたさを抱いた。現体制を擁護したり、資本主義を肯定することが時代遅れであり、保守的な人間は田舎者であるような肩身の狭い思いであった。
早々と鴨川の河川敷に誘われて歌った「国際学生連盟の歌」の歌詞と旋律は妙に心に染みて、感情をゆさぶった。

 学生の歌声に 若き友よ手をのべよ 輝く太陽青空を ふたやび戦火で乱すな 我等の友情は
 原爆あるもたたれず 闘志は火と燃え 正義のために戦わん 団結かたく 我が行く手を守れ

しかし、時代は確実に、穏やかでのんびりした学生生活を約束してくれた。「神田川」の世界に共感し、同棲時代の甘美なムードに憧れた。下宿の隣人G君の部屋からは小椋佳の曲が流れていた。
講演会で壇上に差し出された缶ビールを一気飲みする野坂昭如に心酔し、一乗寺にあった京一会館のオールナイトの上映で、高倉健や藤純子の任侠に拍手・喝采を送った。
そんな訳で、吉本隆明や高橋和巳の本を抱えて歩く上回生の姿を畏敬しつつ、私は野坂の小説を読み、LPを聴きながら、ノンポリの友人や下宿の隣人たちに囲まれて、4年間のノンポリ生活のスタートを切った。

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