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佐伯千仭先生の最終講義

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望月 由孝さん
1973年年卒/法学部
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2018.8.3
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佐伯千仭先生の最終講義

私が立命館大学に進学した理由は、末川博先生の自叙伝『彼の歩んだ道』(岩波新書)を読み感銘したことと、先生との劇的な面会で、法学部を選んだ理由の一つは「死刑制度について深く研究してみたい」と思ったからです。そして佐伯千仭先生との出会いは1回生のとき、1969年の法学部学術講演会でした。その日の講演者は団藤重光東大教授でしたが、講師紹介で佐伯先生が登壇すると聴衆からものすごい拍手と声援が飛び、先生の人気を知ることになりました。2回生となり先生の刑法総論を受講しましたが、弁護士を兼業していた先生の講義はその実践と深い研究活動に裏打ちされたもので、毎時間すごく感銘を受けました。また先生は「法制審議会刑事法特別部会」の弁護士代表委員を務められていたため、時々その審議会の様子などを話され、「どんなことがあっても今回の刑法改正は阻止しなければいけない」と熱弁を振るっておられました。
3回生になり先生の刑法各論の講義を受講しましたが、同時にかなり難関の「佐伯刑法ゼミ」にも入会することができました。ゼミのコンパでは先生の隣に陣取り、先生から昔話を聞きながらお酌をしましたが、先生からもお酌をしていただき、下戸の私でしたがそのときのお酒のおいしさは今でも忘れることができません。先生は73年3月、65歳で退職されましたが、最終講義の演題は「刑事裁判における自由心証主義の問題」でしたが、普段の講義より一層熱が込めらていました。私もその3月に大学を卒業し、紆余曲折を経て高校社会科教師となり、93年から大学講師も兼務し、現在は立正大学で教職科目を担当する非常勤講師をしています。
88年11月、明治大学で「陪審法施行60周年記念」のパネルディスカッションが開催され、先生もゲストで出席されましたので、私も駆け付け先生とお話しすることができました。97年5月には、日本学術会議刑事法学研究連絡委員会主催の「死刑制度」に関するパネルディスカッションが日本学術会議講堂で開催されましたが、先生も89歳とは思えない矍鑠とした張りのある声で「死刑制度のゆくえ」という演題で特別講演をされました。先生は、松川事件や4大死刑再審無罪判決等を踏まえて、「死刑制度は将来廃止されなければいけない」と結ばれ、聴衆者に感銘を与えましたが、それは私にとって先生の「最終講義」となってしまいました。98年4月、佐伯先生の「卆寿の祝い」に誘われましたが、急な転勤が入ってしまし出席することができませんでした。
末川先生は77年2月に逝去され、佐伯先生も2006年9月に逝去されましたが、両先生からから教わった「学問に立ち向かう姿勢」と「人間の生き方」を受け継ぎながら、私はもうしばらく大学生たちと一緒に学んでいきたいと思います。

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