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ベトナムの白い百合

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近藤 雅晴さん
1968年卒/法学部
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2018.2.22
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ベトナムの白い百合

昭和40年。学園祭が間近な時の話しである。法学部2回生Kクラスでとんでもない話が持ち上がった。
普段はおとなしい背の高い男(I君)が相談を持ちかけた。学園祭に舞台劇を上演しようというのだ。Kクラスには演劇部の学生はおろか、舞台に立って見栄えするような顔の男は一人としていなかった。I君は、高校の恩師の原作「ベトナムの白い百合」を舞台劇として構成し学園祭で上演したいと提案した。当時、ベトナム戦争は泥沼化し、南北ベトナムは焦土となっていた。
原作の内容は、南ベトナムのサイゴン大学の男子学生と恋人の女子学生との悲恋。南ベトナム民族解放戦線のリーダーとなった男子学生は官憲に追われる。女子学生はその逃亡を幇助した罪で逮捕され銃殺される。I君の提案の趣旨を聞いて、Kクラス全員が賛成した。直ちに、配役、スタッフ、大道具などの裏方の担当が決った。
ところが、この劇の主人公はチュイランという女子学生である。他にも女性の出演者が沢山必要であるが、Kクラスには女性が一人もいなかった。I君は勇敢にも、女子寮の「春菜寮」に参加を要請した。春菜寮も寮を挙げて参加することとなった。I君と春菜寮の寮長さんが配役を決め、研心館をはじめ空いている教室を借りて猛練習を開始した。私もベトナム人に似ているとかで小作人の役と音響を担当することになった。同じ音響担当のK君はRBC(学友会放送局)の部員だったので、音響効果はK君とRBCの技術部の協力で素晴らしいものとなった。
舞台稽古が始まって直ぐに分かった。Kクラスも春菜寮の誰もが演劇の経験のない素人集団であった。小中学校の学芸会レベル。ただ熱意だけがあった。猛練習と並行して、舞台衣装が春菜寮の皆さんの手縫いで着々と整った。当日の舞台は全員の熱演で、大成功だった。ラストシーン。杭に縛られた女子学生がスポットライトの中に浮かび最後に叫んだ。「ベトナムの自由と独立、万歳」と。一瞬の間を置いて銃声が響いて、スポットライトが消えた。
後日、春菜寮の招きで反省会があった。Kクラスの男どもが女子寮を訪ねた。女子寮に入ったのは後にも先にもこの時一度きりである。あの時の、Kクラスの紳士諸君、そして春菜寮の淑女の皆さん、お元気ですか。

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